ある日の朝、
自宅のベランダの軒下で洗濯物を
干している難聴の妻の姿がありました。
この日はあいにくの天気で
そろそろ雨が落ちてくる予報でした。
でも季節は残暑がのこる9月ですから
部屋の湿気を換気をするために
私の部屋の窓が開いていました。
妻が洗濯をするベランダと
私の部屋はとなりでしたので
妻に向かって言いました。
「雨が降るけど窓は開けて
おいてもいいの~」
最初は妻は気が付きませんでした。
難聴なので仕方がありません。
いつものことです。
次は大きな声で
「ママ~、ママ~」と呼びました。
すると妻はあたりをキョロキョロと
見まわしはじめました。
呼ばれていることに気が付きました。
でもこちらを向いてくれません。
もう一度、呼ぶと庭先をのぞき込んだり、ベランダに出入りできるとなりの部屋を見たり、私の声がどこから聞こえてくるのかわからない様子でした。
実は妻は難聴という障害を負ってからは
補聴器をいつも装着しています。
補聴器はかすかしか聞こえない小さな音を増幅してくれる機能がありますが、音の方向までは感知してくれないようなのです。
私の声が補聴器によって聞こえては
くるもの、どこから聞こえてくるかは
わからないことが多いのです。
そしてようやく私に気付いてくれて「雨が降るから窓を閉めておいた方がいいよ」という会話が成立しました。
私は妻が難聴者だと知って会話をするので聞こえなくて当然、何度も大きな声で呼ばないと気が付かないことはわかっています。
しかし、
それが他人だとした場合・・・・
例えばスーパーやホームセンターの
売り場に立つ店員だとしましょう。
制服を着ていたらお客さんから
声を掛けられます。
「ちょっといいですか~」
「すみませ~ん」
という感じで呼ばれます。
そのときキョロキョロとあたりを
見まわしてお客さんを探すことが
できなかったらどうなりますか?
もしくは聞こえていなくて無視したら?
当然、お客さんは妻が難聴者だとは知りませんからイライラすると思います。気の短い性格の人でしたら怒鳴られてしまうことあるでしょう。
家族は難聴だからと理解を示して
くれますが、相手が他人の場合は
そうはいきません。
私の妻が難聴者であっても
他人には関係ないことです。
こんな理由から
妻は接客業を避けています。
自分が聞こえないという理由も
ありますけど、
相手を不愉快にさせたくないという
気持ちもあるのだと思います。
カテゴリ:難聴者が働けない環境